ファセットと光の計算：フロステッドエッジの技法
1. フロステッドエッジが映えるアメシスト 5.006ct
今回出品したアメシスト 5.006ct フロステッドラウンドカットは、パビリオンに石の形に沿った細かなカットを施し、クラウンには放射状のフロステッドエッジを加えています。光を柔らかく反射し、牡丹の花びらのような繊細で優雅な輝きを生み出しています。
実は、このフロステッドエッジには個人的な思い入れがあります。2020年ごろ、SNSでこの技法を使ったデザインを数多く目にし、「これ、いいなあ」と思いながら眺めていた記憶があります。その後、このルースに出会えたことが嬉しくて、届いた瞬間には思わず声が出たほどです。
2. フロスト加工とは？
フロスト加工（Frosted Finish または Frosted Facet、表面に細かな凹凸を施す技法）は、宝石の特定の部分に微細な凹凸を施し、光の拡散効果を生み出す技法です。通常の研磨面がシャープな反射光を生むのに対し、フロスト加工は光を柔らかく広げ、落ち着いた風合いを演出します。これにより、輝きを和らげたり、デザインのコントラストを強調したりする効果があります。
この技法を施す際には、まずルースを一度磨き上げ、その後600gritまたは1200gritのラップ（Lap、宝石を研磨するための回転式研磨盤）を使用して表面を加工します。これらのラップは、カットの初期段階で使用されるもので、表面に細かな凹凸を作り出すのに適しています。この作業は、ラップを停止した状態で行うカッターが多いです。止まったラップの上でルースを慎重に動かし、均一な凹凸を施すことで、滑らかなフロスト面を作り出します。この工程によって、光が柔らかく広がり、穏やかな輝きを生み出します。
3. フロステッドエッジの加工方法
フロステッドエッジ（Frosted Edge、ファセットのエッジ部分に施すフロスト加工）は、一般的なフロスト加工と異なり、ファセット（Facet、宝石に施された研磨面）のエッジ部分にのみ細かな凹凸を施す技法です。通常のフロスト加工が宝石表面全体に広がる柔らかな質感を作り出すのに対し、フロステッドエッジは特定のラインを際立たせ、デザインのシャープさと柔らかさを両立させる役割を持ちます。
フロステッドエッジの加工では、エッジの均一性と直線の精度を確保するため、角度計算と反射のバランスを調整する必要があります。この調整は従来、職人の経験に頼る部分が大きかったですが、Seán O'Neilが開発した「Edge Frosting Tool」により、より正確で安定した加工が可能になりました。
Edge Frosting Toolを用いた計算によると、同じ45.0°でファセットを設定しても、パビリオンが4つの場合は35.3°、8つの場合は42.7°と、ファセット数によってエッジの角度が異なることが分かります。
私もJustin K PrimのYouTube動画でこのツールを知り、フロステッドエッジの角度調整が職人の経験と感覚に大きく依存していたことを改めて実感しました。ファセットの数によってエッジの角度が変化するため、手作業での調整は非常に困難です。しかし、Edge Frosting Toolを使うことで、こうした計算が一瞬でできることに驚きました。
ファセットの配置によってフロステッドエッジの角度が変化し、エッジ（Edge、ファセット同士が交わる境界部分）の輝きにも影響を与えます。これまで手作業で精密に調整するには高度な技術が求められていましたが、Edge Frosting Toolの導入により、より安定し、再現性の高い仕上がりが可能になりました。
4. フロステッドエッジ流行の背景
2020年の夏ごろ、Facebookで「Edge Frosting Tool」を使ってフロステッドエッジを施したファセットデザインが投稿されました。このデザインは「今まで見たことがない」と評判になり、カッターたちの間で大きな注目を集めました。これをきっかけに、フロステッドエッジの技法が広まり、多くのカッターが試みるようになりました。
5. まとめ
フロステッドエッジは、単なる装飾を超えた、光を操るための技法です。繊細な計算と職人技が融合し、宝石に新たな表情をもたらします。今回のアメシストでも、その独特の輝きを楽しんでいただければ幸いです。
公式ショップでは、このアメシストをはじめとした多彩なルースを取り扱っています。ぜひご覧ください。
フロステッドエッジとフロストカット、仕上がりの違いを比べてみると面白いかもしれません。
撮影機材
ただいま調整中！（完成形に近づいてきました）動画をお休みしており、ご不便をおかけします。