色と角度

すっきりとした直線が印象的なラウンドカット、”Simple Jack” でモンタナ・サファイアをカットしました。

デザイナーのBob Kellerはミネラルショップを営んでいたようです。Webサイトはなくなってしまったのですが、Web Archiveからファセットデザインを見ることができます。

Web Archiveのリンク > https://web.archive.org/web/20170226055434/http://www.rockhounds.com/rockshop/gem_designs/simple_jack/index.shtml

このデザインのパビリオンとクラウンの角度を調整し、3つのモンタナサファイアをカットして、色の出方がどうなるか試してみました。

アイスブルーモンタナサファイア “Simple Jack” 0.443ct

まずはテストカット。原石はごくごく淡いブルーで、ほとんどカラーレスになるかも、と思いました。

カットにとりかかる前に、Gem Cut Studioでサファイアが明るく見える角度を探し、元のデザインより、クラウンが高く、パビリオンが浅くなりました。

実際の角度は次のとおりです。

・パビリオン
P1: 43度→40度に変更

・クラウン
C1: 29度→33.63度に変更
C2: 25度→29.33度に変更

ガードルのカットがとても細かいので、パビリオンをカットする時に位置合わせに手こずってしまい、ガードルがとても薄くなってしまいました。

それにもかかわらず、できあがったルースは予想していたよりも色が出て、角度によってはブルーがはっきり見えました。

ご購入はこちらから > https://www.raralab.shop/product/montana-sapphire-simple-jack-0443ct/67

このデザイン、もしかしたら色がはっきり出るのかな?と思い、もう1つ、淡めの原石をカットしてみました。

ゴールデンモンタナサファイア “Simple jack” 0.362ct

こちらのモンタナサファイアも、上のアイスブルーと同じ角度でカットしました。

原石はブルーとイエローがふんわり見える感じで、それほど濃い色ではありませんでした。
完成したルースは、予想よりだいぶ濃いめの色になりました!

キュレット近くのインクルージョンの色が全体に反射して、ブラウンがかったゴールデンに見えます。光によっては、メタリックに輝きます。
柔らかい光だと、ギャラリーの2枚目の写真のような、落ち着いたブラウンに見えることが多いです。

原石にあったブルーとイエローは、角度によってほんの少し顔を出します。

テーブルから見えるインクルージョンは、どんな光の状態でもはっきりしています。
(このモンタナサファイアの原石のロットは、インクルージョンが印象的なものが多いです♪)

カットがほぼパーフェクトにできて気持ちよかった!
カットがきれいにできたおかげか、写真も撮りやすかったです。

ご購入はこちらから > https://www.raralab.shop/product/montana-sapphire-simple-jack-0362ct/66

グリーンモンタナサファイア “Simple Jack” 0.411ct

このデザインはFaceted girdleと呼ばれる、ガードルをカットするデザインです。今回は3つとも、ガードルの16ファセットを#3000のダイアモンドで軽く磨きました。

ガードルを磨くと綺麗だけど、ガードルだけでかなり時間がかかるし、そろそろ別のデザインをカットしようかな…、と思ったのですが、ふと思いついたことがありました。

「パビリオンをもう少し深くしたらどうなるだろう?」

上のゴールデンでは、原石は薄かったのに、キュレット近くのインクルージョンの色が石全体に回り込み、かなり濃いめの色になりました。
では、パビリオンの角度を深くして距離を稼いでも、色がきれいに出るのかも?

そこで、パビリオンを40度から43度にしてカットしてみました。Bob Kellerのオリジナルデザインのパビリオンと同じ角度です。

クラウンは上2つと同じ角度です。
クラウンがオリジナルデザインより高くなった分、背が高い、深さがあるルースになります。

使用した原石は、ほんのり若草色。なるべく条件を揃えたかったので、色の淡さが最初の2つと同じくらいの石を選びました。

完成したルースは、少しメタリックなブルーイッシュグリーンになりました。淡めの色がきれいに出て嬉しいです。

ガードルも最初の2つと同様に、#3000のダイアモンドで軽く磨きました。

ジュエリーにセットする場合は、ガードルを磨いても磨かなくても、石の見え方にほとんど差がないそうです。
完成したルースを手に取ると、キラキラが多くて嬉しい♪ガードルを磨くのは大変でしたが、やって良かったです。

ご購入はこちらから > https://www.raralab.shop/product/green-montana-sapphire-simple-jack-0411ct/68

カットを終えて

色が淡い原石は、深めのファセットデザインにするときれいに色が出ることがわかりました。

少し経ってから、なんとなく気になってJustin K. Primの"The Secret Teachings of Gemcutting"を見てみたら、今回分かったことがちゃんと書いてありました!
この本は何度も目を通したけれど、ぼんやりとしか理解していなかったようです。

いろいろ試したおかげで、しっかり腹落ちしました!
これで、原石の色に合ったファセットデザインが選びやすくなると思います。

ガードル側から撮った写真を並べてみました。アイスブルー→ゴールデン→グリーンの順番です。
グリーンのパビリオンが深めになっているの、わかるでしょうか?

撮影機材

Olympus OM-D E-M1 Mark II
Super-Multi-Coated BELLOWS-TAKUMAR 100mm f4 M42
AUTO BELLOWS
Super-Multi-Coated TAKUMAR 28mm f3.5 M42(ソーティング)
エコリカ高演色LEDランプECL-LD2EGN-L3A(5000K)
Capture One 23
DaVinci Resolve

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