ガーネットのためのデザイン(2)

ガーネットの色をもっと綺麗に出すために、ガーネット専用のファセットデザインを探しました。

http://www.facetdiagrams.orgで、Jim Perkinsの「GARNET CUSHION」というデザインを見つけました。

ファセット図はこちら > http://www.facetdiagrams.org/database/files/pc15108.html

Jim Perkinsはアメリカ人で、数多くの美しいデザインを発表しています。ずっと、彼のデザインをカットしてみたい!と思っていたのですが、難しいデザインが多いため、躊躇していました。

ガーネット専用のデザインで、大好きなスクエアクッションで、しかもずっとカットしたかったJim Perkinsのデザインなので、今回思い切って挑戦してみました。

レッドガーネット “GARNET CUSHION” 0.47ct

以前、タンザニアの未選別の原石を一袋仕入れました。その中にガーネットらしい色合いのこの石が入っていて、クラリティもサイズも良かったので、テストカットに使いました。

以前、スクエアクッションで微妙に菱形っぽくなったので、慎重にカットしようと思ったのですが…、今回も目分量で形を決めたため、微ズレしてしまいました。

また、C4とC5を仕上げている時に、「もうすぐ完成だ〜」と気が急いて手の圧が均等でなくなり、ファセットの大きさが微妙に不揃いになってしまいました。

細かなズレが積み重なり、テーブルを磨いたら、四隅のミートポイントがぴったり合いませんでした。このため、ミートポイントのズレが目立たないよう、テーブルを深めにカットしました。
できあがったルースは、テーブル角が丸い仕上がりになりました。

カットは完璧ではないのですが、色は暗くなりすぎず、綺麗な赤が出ました。さすが、ガーネットのために作られたデザインです。

カラーシフト マラヤガーネット “GARNET CUSHION” 0.583ct

お買い物ページはこちら > https://www.raralab.shop/product/color-shift-malaya-garnet-garnet-cushion-0583ct/64

次はマラヤガーネットでカットします。今回は、ガードルを成形している時にスケールルーペで長さを測り、ほぼ完璧な形にしました。

スクエアクッションが正確にカットできたおかげか、その後はスムーズに進みました。テーブルの仕上げに入り、あと少しですべてのミートポイントが完璧に合う!となった瞬間に、2本の傷が発生しました。。。

インクルージョン由来の傷に見え、奥にもさらにインクルージョンがあるような気がしたので、悩んだけれど、ここで終わりにしました。
小さい石の研磨では、傷などが発生した時にリカバリーできる余裕があまりないのが難しいです。

完成したルースは、柔らかなピンク色になりました。カラーシフトはやや弱いかもしれません。

クリティカル・アングル(Critical Angle)

「クリティカル・アングルに気をつけて!」と宝石をカットする際によく言われます。

クリティカル・アングルは、「この角度より浅い(小さい)とウィンドウができるよ!」という角度です←だいぶざっくりな説明です。
クラウンとパビリオンのそれぞれにクリティカル・アングルがあって、特に注意した方が良いのはパビリオン側のようです。

(クリティカル・アングルの定訳は「臨界角」なのかな?馴染みがなくて、この言葉が合っているかわからないので、ここではクリティカル・アングルと表記します。)

ガーネットの正面から見た場合のクリティカル・アングルは、種類によって33度〜35度になります。
カットする際は、正面から見る時のクリティカル・アングルに4〜5度くらい足した、37度〜40度くらいまでがおすすめの角度となります。少し余裕を持たせることで、石をある程度傾けてもウィンドウによる色抜けが出なくなります。
パビリオンをこの角度より浅くカットしてしまうと、ウィンドウができ、石の色が抜けてしまったように見えます。

ファセットデザイナーがデザインするときは、人によってお気に入りの角度があるようです。

今回使用したJim PerkinsのGARNET CUSHIONは、パビリオンが38度です。
ガーネットの色が明るく出ているのは、パビリオンをギリギリまで浅めにしているおかげなのかも。
石をだいぶ傾けてもウィンドウが気にならないのは、クラウンの複雑なデザインのおかげでしょうか。

Jim Perkinsのデザイン、やっぱりすごいです。もう少し大きめの原石で、またカットしてみたいです。

Jim Perkinsについて

デザイナーのJim Perkinsについて、HASHNU STONES & GEMSに掲載されている彼の経歴を要約してご紹介させていただきます。
彼が宝石研磨を始めたのは40歳になってから、そしてファセットデザインを始めたのは50歳になってからであることに驚き、勇気づけられました。

HASHNU STONES & GEMSの原文はこちら > https://www.hashnustones.com/jim-perkins.html

☆☆☆☆☆☆

Jim Perkins(1950/11/5〜2021/11/16)は10歳〜11歳頃に宝石に対する興味を抱き、両親と一緒にミネラルクラブに入会しました。その後父親が家の地下で鉱物のショップを開業しました。Jimは5年生の頃、学校から帰るとすぐに石を切る練習をしました。最初は多くの石を台無しにしましたが、やがてうまく石を切れるようになり、彼の父親の顧客のために多くの石を切るようになりました。Jimは宝石研磨の雑誌でファセット図を学び、父親に宝石研磨機を買ってほしいと懇願しましたが、父親は理解を示さず、機器を買ってもらえませんでした。

大学時代(1969年〜1975年)には、オハイオ州ワズワースのモーブリーズ・クラフトセンターでカボションクラスを教えました。1990年になり、彼はついに中古の宝石研磨機を購入し、レッスンを受けました。クオーツをラウンドブリリアントカットで研磨しましたが、それに満足せず、2001年にはオレゴン州ポートランドのノースウェスト・ファセッターズ・シンポジウムでJerry CappsからGem Cadソフトウェア(Webサイト > https://www.gemcad.com)の使い方を学びました。自宅に研磨スタジオを設置してから、土曜日には宝石研磨クラスを教え始め、後に5日間のクラスも始めました。Perkinsはアメリカ全土、そしていくつかの外国の学生を指導し、宝石研磨と宝石デザインに関する20冊以上の本を出版し、定期的にLapidary Journal/Jewelry ArtistとRock & Gemにデザインや特集記事を寄稿しました。

撮影機材

Olympus OM-D E-M1 Mark II
Super-Multi-Coated BELLOWS-TAKUMAR 100mm f4 M42
AUTO BELLOWS
Super-Multi-Coated TAKUMAR 28mm f3.5 M42(ソーティング)
エコリカ高演色LEDランプECL-LD2EGN-L3A(5000K)
Capture One 23
DaVinci Resolve

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