4枚のラップと3つの研磨剤

ハンドピースの調整シリーズの第3回目です。

最終回の第3回目は、ポリッシングラップ(Polishing Lap)と研磨剤のベストな組み合わせを探していきます。

ハンドピースの調整シリーズ
第1回を読む > https://www.raralab.jp/gemdiary/240507-balancing-handpiece
第2回を読む > https://www.raralab.jp/gemdiary/240507-stepcut-to-pixelcut

ベストな研磨方法を探す

ハンドピースの調整がほぼ完了したので、いよいよオレゴンサンストーンのピクセルカットのポリッシュに取りかかりました。これまでは、磨く時にハンドピースを左右に振っていましたが、この方法では微妙なズレが生じる可能性があることがわかりました。

そこで、ツーソンで開催されたAGTAセミナーの動画で、宝石研磨の専門家Justin K. Primが紹介した「ハンドピースを動かさない方法」を参考にしました。こちらの動画の30分ごろと、補足説明の動画です。

ラップと研磨剤を検証する

まず、GearlooseのDominatrix Lapにダイヤモンドパウダーの組み合わせで磨いてみました。Dominatrixは内側がDIAMAX、外側がBATT Lapというデュアルラップですが、残念ながら廃盤になってしまいました。

#3000のファインカットでは、手を動かさなくても問題なく磨けることが分かりました。しかし、ポリッシュの#100000に進むと、磨いても傷ができてしまいました。内側のDIAMAXで磨く時に傷が広がる感じがしたので、DARKSIDEに切り替えてみました。

DARKSIDEでの試行錯誤

DARKSIDEは、DIAMAXより削る時のあたりが柔らかい感じがします。
手持ちの6インチのDARKSIDEに、#3000と#100000のダイヤモンドパウダーの組み合わせで試してみました。

Justinが6インチをデュアルで使っていたので、6インチのDARKSIDEで#3000と#100000のデュアルを試してみました。少し使ってみたところ、自分には狭すぎました。

ちょうど、少し前に注文していた8インチのDARKSIDEが届いたので、6インチから8インチに切り替えて、#3000と#100000のダイヤモンドパウダーを使って磨いていくことにしました。傷も出にくく、良い感じに磨けるようになりました。

ただし、ひとつひとつのファセットがそれなりに大きいので、時間がかなりかかりました。

ダイヤモンドだと時間がかかるのかも、と思ったので、8インチのDARKSIDEをきれいに洗い、苦手なセリウムを試してみました。
セリウムは最初は早く磨けるように思えましたが、トータルではあまり変わらない感じです。また、水分のコントロールが難しく、研磨機や床の汚れも気になりました。そこで、結局ダイヤモンドに戻すことにしました。

アダムさんのダイヤモンドパウダー

ここで、Bearstoneのアダムさんのダイヤモンドパウダー#60000を、DARKSIDEで使うことにしました。オレゴンサンストーンのポリッシュがうまくいかない時は、ダイヤモンドが効く!という記事を見つけたのと、アダムさんがFacebookの研磨関連のグループで「とてもいい!」と言っていたのを思い出したのです。

ダイヤモンドパウダーは注文してすぐに届きました。このパウダーは、磨き始めから「ベストな状態」で磨ける感じがします。

DARKSIDEの8インチで、この#60000と#3000のデュアルで使ったところ、傷もほとんど出なくなりました。
しかし、時間はそれなりにかかりました。

BA5T Lapで、きれいに、速く

そこで、8インチのBA5T Lapに#3000と#60000のダイヤモンドパウダーを使って磨いてみました。

実は少し前に、BA5T Lapとダイヤモンドパウダーの組み合わせで、淡いグリーンのタンザニア産フェルスパーを磨きました。傷が出やすくてとても大変で、クラウンを磨いて投げ出してしまっていました。
それ以来、柔らかい石やインクルージョンの多い石ではBA5T Lapを使うのを避けていました。

BA5T Lapはポリッシュ用のダイヤモンドパウダーの適量を掴むのが難しいです。オイルに混ぜた#60000をラップに少し塗ってからほとんど拭き取るようにしたところ、速く、きれいに磨けるようになりました。

左右に動かすとわずかにズレが生じるため、奥から手前・手前から奥の、縦方向に少し動かすのがベストだと分かりました。
特に、劈開やインクルージョンの影響なのか、傷が出やすいファセットでは、できるだけ動かさず、速度もゆっくりにすると、うまくいくようになりました。

また、力を入れると傷がつきやすいようです。ハンドピースを乗せるテーブルを調整し、石とラップがギリギリ触れるか触れないかの高さにすると、スムーズに磨けます。
テーブルが低くて石を押し付ける状態になっていると、傷がつきやすく、磨く時間も長くかかるようです。

腱鞘炎も楽に

10年ほど前に、マウスやキーボードの使いすぎで、ひどい腱鞘炎になりました。ハンドピースを左右に振るスタイルでは、マウスを動かす時とほぼ同じ動きなので、腱鞘炎がぶり返しそうでした。今回の調整で新しく取り入れた、ハンドピースを縦向に移動させるやり方に切り替えたら、痛みがほとんど出なくなりました。

ハンドピースを大きく動かさないことで、トラブルシューティングも楽になりました。石に傷ができた時、その原因が石のインクルージョンなのか、ラップの問題なのか、特定しやすくなりました。

大きなファセットも怖くない

大きなファセットのあるデザインが好きなのですが、カットスタイルを変えたら、自信を持って、安心して磨けるようになりました!上の写真は、ハンドピースを調整し、磨き方も変えたあとで完成したルースです。

四角いのが、調整シリーズの発端となったピクセルカットのオレゴンサンストーン。だいぶ小さくなってしまいました。(非売品。記念に取っておきます)

途中で投げ出していたタンザニア産フェルスパーもきれいにできました。キュレット近くのレインボウを、割らずに残すことができました。

丸いオレゴンサンストーンは、サンストーンのためにデザインされたダイアグラムでカットしました。3つの大きなファセットから石の中が覗けます。

フェルスパーと丸いオレサンは、ソーティング取得後に出品します。お楽しみに♪

ハンドピースの調整シリーズ
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第2回を読む > https://www.raralab.jp/gemdiary/240507-stepcut-to-pixelcut

撮影機材

Olympus OM-D E-M1 Mark II
Super-Multi-Coated BELLOWS-TAKUMAR 100mm f4 M42
AUTO BELLOWS
Super-Multi-Coated TAKUMAR 28mm f3.5 M42(ソーティング)
エコリカ高演色LEDランプECL-LD2EGN-L3A(5000K)
Capture One
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