Rara Lab(ララ・ラボ)

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ロバート・ロングのヘキサゴンカットとミートポイント・ファセッティング

ロバート・ロング(Robert H. Long)のデザインを採用し、正確な六角形(ヘキサゴン)にカットしたモンタナサファイアを2点出品しました。ミートポイント・ファセッティング(Meetpoint Faceting、ファセットの交点を基準にしてカットする技法)を活かし、シンメトリーの美しさと輝きを最大限に引き出したルースです。

今回のカットでは、より正確で美しい仕上がりを目指し、カット順序を調整しました。その結果、ミートポイント・ファセッティングの原則に沿った方法で、正確な六角形をより簡単に作ることができました。

ロバート・ロングとミートポイント・ファセッティング

ロバート・ロングの名前は、ファセットデザインを探す際によく目にしていました。最初は詳細を知りませんでしたが、調べてみると、彼の技術が現代のカット技法に大きな影響を与えていることに驚きました。

ロバート・ロングは、ミートポイント・ファセッティングの技術を確立し、カットの再現性を高めた人物のひとりです。1975年から研磨技法の基礎を築き始め、数学的アプローチを取り入れてミートポイントを正確に揃える手法を確立しました。

それ以前の研磨では、カットの正確さは職人の経験と目測に大きく依存しており、高い精度を保つには熟練の技術が必要でした。ロングは、ミートポイント・ファセッティングという方法を提唱し、プレフォーム(Preform、研磨前に大まかに成形された原石)を使わず、最初からミートポイントを正確に揃えながらカットする手法を確立しました。

この技法により、複雑な形状のカットでも計算通りに仕上げやすくなり、デザインの自由度が広がりました。

ロングの考案した数学的手法は、後にファセットデザイン用ソフトウェア「GemCad」の基礎となり、現在も多くのファセッターが彼の技術を活用しています。近年では、より直感的なインターフェースや高度な機能を備えた「Gem Cut Studio」などの新しいソフトウェアも登場し、ファセットデザインの可能性を広げています。

これらのツールの進化により、カッターはデザインのシミュレーションやカット手順の最適化を容易に行えるようになり、複雑なデザインや新しいカットスタイルにも挑戦しやすくなっています。

六角形を正確にカットするための工夫

新しいデザインをカットするとき、以前はいきなり実践していました。しかし、初めてのデザインはうまくいかず、思い通りに仕上がらないこともよくありました。

今も試行錯誤は続いていますが、Gem Cut Studio上でデザインと手順を確認してから実際の石をカットするようになったことで、つまづきやすいポイントややりやすい順番が明確になりました。

今回のモンタナサファイアは六角形(ヘキサゴン)のデザインです。使用したファセット・ダイアグラム(Facet Diagram、ファセットカットの設計図)では、最初にガードル(宝石の輪郭)をカットする手順が示されていましたが、これまでの経験から、パビリオンを先にカットした方が六角形の精度を保ちやすいと判断し、テストカットなしで順番を変更しました。

六角形を正確に作るには、ガードルの各辺の長さを揃える必要がありますが、手作業での測定ではわずかな誤差が生じることがあり、それが全体のシンメトリーに影響を与えることもありました。

そこで、今回はカットの順番を以下のように変更しました。

1. 最初にパビリオン(宝石の底部)をカット

2. その後、ガードルをカット

この順番にすることで、正確な六角形をより簡単に作成できました。ガードルをカットする前に、すでにファセットの交点が揃っているため、六角形の形を決める際のズレを最小限に抑えられました。

出品中のモンタナサファイア

今回のデザインは、ファセット数が少なくシンプルながら、光の反射による面白い視覚効果が楽しめます。両目で見ると中央がウインドウのように見えることがありますが、片目で見ると色抜けせず、美しい色がしっかりと感じられます。

デザインを選ぶ際、小さなモンタナサファイアの原石が映えるよう、ファセット数とサイズのバランスを考慮しました。真正面から見たときに石が明るく見えることを重視し、Gem Cut Studioで明るさを確認しながらカットしています。

カットしてみると、想像以上に美しい輝きが生まれました。石全体に走る細いリボンのようなラインは、細いファセットが刻まれているのではなく、光の反射によるものです。

モンタナサファイア 0.413ct "SMALLEST HEX APEX"

モンタナサファイアらしい、グリーンやグレーをわずかに感じる水色。石のサイズに対してカットが小さすぎず、淡い色がしっかり見えるのにキラキラと輝きます。

ロッククリークのオールドストックの原石を使用しカットしました。研磨中に10倍ルーペで確認できるインクルージョンがありましたが、撮影時には見つかりませんでした。また、クラウンにごく小さなカットのズレがありますが、こちらも撮影時には確認できなかったため、写真がありません。

商品ページはこちら → https://www.raralab.shop/product/montana-sapphire-0413ct-smallest-hex-apex/102

モンタナサファイア 0.448ct "SMALLEST HEX APEX"

ミートポイントがほぼパーフェクトで、インクルージョンなし。カラーレスにも見える、ごく薄いブルーの原石でしたが、淡い色が消えずに、透明感のある輝きを持っています。

この原石は、アメリカの引退したカッターのご夫妻から譲り受けたものです。ファセットエッジがかなり消えてきており、UV蛍光を示します。

商品ページはこちら → https://www.raralab.shop/product/montana-sapphire-0448ct-smallest-hex-apex/103

撮影機材

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